短歌読みます、うたあつめ。

拝見した短歌への、返歌や感想を書く、公開ファンレターです。

RE それだけで美しいとは思えずに片足かるくひきずっている

「片足かるくひきずっている」が心に残りました。

極端な想像をすれば、歩く度に激痛が走る、人魚姫かもしれませんよね。そこまでいかないとしても、なぜひきずられるのでしょうか。

 「それだけで美しいとは思えずに」を下の句が受けているわけですから、上の句が「なぜ」になるはずですよね。

主体にとって「美しいと思える」状態とは何なのでしょうか。語られない以上は、主体にしか分からないことですよね。『コンプレックス』が題ですから、主体にとって「何かが足りない」か「これが無ければ」のどちらかがあることは推察できます。

 

例えば、大切な人に愛情表現されたとします。でも、心に刺さった抜けないトゲがコンプレックスですから、頭では理解できても、「ほんとかな、そうかな」と受け取るのが難しいこともあるでしょう。

 

あるいは、美容院でもネイルサロンでもいいのですけど、ほんとうに素敵で似合ってて、そう言われても、「お仕事だから」って、受け止めてしまうかもしれない。ここも、何かの心のトゲが刺さっていて。

 

こんな風に、状況は幾らでも、それこそコンプレックスの数だけイメージできますよね。ということは、人の数だけコンプレックスがあるのなら、様々な方が、この作品の中に、「私がいる」と思えるのではないでしょうか。

 

歩き方という形になるまで、心が身体に影響を及ぼすことはあるでしょう。それほど痛い心のトゲ(コンプレックス)であり、「それだけで」なのでしょう。

 

別の見方としては、「それだけで」を「ありのまま」の意味として受け取ると、「ただ自分がそこにいるだけでは美しいと思えない(自分を受け入れられない・許せない)」という作品としても鑑賞できるのではないでしょうか。

 

様々な読み方が出来き、おそらく多くの抜けないトゲを胸に秘めている方が、「これは私だ」「ここに私がいる」と思えるだろうから、この作品が好きです。

いつか、そのトゲが抜けたり、傷まなくなってくれたら、いいなあ。

 

 

返歌

「わたしはね綺麗ですものかしずいて当然でしょうカリカリはまだ?」

 

それだけで美しいとは思えないピグマリオンはドンキへ向かう

 

片足をかるくひきずる日々だった君に言わないあの頃のこと