RE 夕焼けが君の自転車ふちどって従いたくない止まれの白字
君の口に触れたあの日が遠ざかり食パンの耳のやわらかい朝
— 桜田ねぎ (@paleblue_tanka_) 2018年4月3日
夕焼けが君の自転車ふちどって従いたくない止まれの白字
失恋も短歌にすれば美しい くるくる回す傘から雫
/桜田ねぎ#名刺代わりの自選3首
ペンネームができたので再掲載。
河野裕子さん、俵万智さんが好き。今年も短歌甲子園に出ます。
「君の口に触れたあの日が遠ざかり食パンの耳のやわらかい朝」
キスをしたかは分からないわけですよね。もしかしたら指で触れたかもしれない。
解釈としてまったく違っていたら申し訳ないのですが、私は、「口に触れる」ほど親しかった「君」との別れの歌かなと受け止めました。
そして、「食パンの耳のやわらかい朝」という日常が戻ってくるまでに、様々な心の葛藤があって、そしてまた日常がある。そんなイメージを私は描きました。
「口」「食パン」はどちらも触覚で感じ取れる対象ですよね。
歌の中で五感をどう使うのかという点が、とても興味深いです。
「夕焼けが君の自転車ふちどって従いたくない止まれの白字」
そうですよね、その瞬間従いたくないですよね、とうなずきますし、大切な瞬間を切り取った作品だと感じました。
「時間よ止まれ」とか「永遠になれ」と表現せずに、「止まれの白字」という、誰もの近くにある物を出し、それに従いたくないと表現することで、時間を止めて、切り取ったこの作品の中に永遠を含むことに成功していると感じました。
好きだとか愛おしいとか、「気持ち」も走ってるはずで、だからこそ止まりたくない(従いたくない)のですよね。爽やかで、好きです。
「失恋も短歌にすれば美しい くるくる回す傘から雫」
悲しみを笑い飛ばす。辛さをネタにする。そんな身近なことから、短歌をはじめ、アートへと昇華すること、ありますよね。
「くるくる回る傘」という表現がいいですね。心の中での出来事なのか、実際に雨でくるくる回してみたのか分からないですけど、複雑な葛藤がある時に、くるくる回せた分だけは、悲しみに飲み込まれずに済んだように思えるからです。
傘をまわしてみた、短歌にしてみようかな。
実際の順番は分からないですけど、例えばそんな風に、少しずつ、悲しみから日常を取り戻していくプロセスも歌に組み込まれたかもしれないですね。
短歌にしたから美しいのではなくて、悲しみに溺れない、作品の姿勢自体が私は美しいと感じました。
返歌
しなやかなあなたの髪の感触がまだ残る手で握るつり革
夕焼けで長くなってく君の影もう少しだけここで話そう
失恋を短歌に変える日が来れば胸の傷跡想い出になる