短歌読みます、うたあつめ。

拝見した短歌への、返歌や感想を書く、公開ファンレターです。

RE 夢で会うなら監督はわたしだし別れのシーンはカットしておく

 2014年9月22日に買ったよと、Amazonが教えてくれました。Kindleでも短歌が読めるんだ! と、買った記憶があります。

やさしいぴあの(百首選) 新鋭短歌シリーズ

やさしいぴあの(百首選) 新鋭短歌シリーズ

 

嶋田さんが百首選ばれた書籍の中から、とくに好きな作品を12首選びました。

長過ぎるファンレターにならないように、出来るだけ短く感想を書くことにいたします。

 

日曜のまひるあなたを思うとき洗濯ものもたためなくなる

日曜日は会えない関係なのかもしれない、例えばスポーツが好きな人で怪我をしないか心配してるのかもしれない、何か事情があるのでしょうけど、その心のそわそわの程度を、具体的に「洗濯物もたためなくなる」ほどだよと表現されたことに惹かれました。

日曜日は会えない読みの場合は、洗濯ものをたたむことで「ズキン」とくるのだろうなとも思いました。様々な読み方をさせてくれる作品ですね。

(上記は、訂正前の感想です)

 

 2018年5月21日 訂正

大変失礼しました、Kindle版を手書きで書き写す時に、誤って助詞の「の」を入れてしまいました。訂正しお詫びいたします。

 

関係性や状況が分からないですから、様々な読み方ができますね。

この歌は、ただ「日曜のまひるあなたを思うとき」とだけ歌われていますから、様々な読み方ができて、読み手が「ここに私がいる」と受け取ることが出来ますね。

私は、たしかに普段ならなんでもないことが、手に付かないことってあるなと共感します。誰かが誰かを想う、愛おしく感じることを、こんな風に言葉に出来るのだと、鑑賞させて頂きました。あたたかい作品ですね。

 

バスタブの淵に沈まぬようにしておかえりなさいの練習をする

これは、恋人たちが一緒に暮らしだした時期なのかなと受け止めました。バスタブ、つまり浴室は密室ですから、心の奥の奥に似て、通常は誰にも見られない・見せない場所ですよね。そこで、もし、自分の大切な人が、例えば普段は、「そっちが告白したんじゃない」くらいの関係性だったとして、じつは舞台裏・心の奥の奥では、こんな風に練習してくれているとしたら、すごくチャーミングだなと、微笑んでしまいました。

ベタですけど、恋をすると綺麗になるといいます。こういう恋なら、それは、綺麗になりますよね。

 

すいかずら夏を忘れて咲きなさい 淋しい匂いのまま揺れなさい

すいかずら自体に命令する歌ではありませんよね。なぜ、夏を忘れろと思うのか、なぜその匂いを「淋しい」と感じるのか。背景は分からないですけど(だから様々な解釈が出来ますけど)、おとぎ話に出てくる魔法の呪文のような、不思議な響きに惹かれます。ことに「淋しい匂いのまま揺れなさい」が心に刺さりました。

 

時間割にこっそり「デート」と書いておく(そのまま書き写すといいよ)

中学生も相当大人になるの早いですけど、高校生くらいかなあとイメージしました。じつはそうでなくて、小学生だったらそれはそれで可愛らしいですね。

とにかく可愛らしくて、まだ関係性もこれから作られていく頃なのかなと思います。何より「そのまま書き写すといいよ」がとても素敵です。

「そのまま好きになっちゃっていいよ」と、例えば睡眠学習を信じて、寝てる人の耳元で囁いてみるような、ことを連想しました。

 

長い髪の女は闇を抱きすぎて朝日みたいな人が恋しい

例えば僕は、腰まで髪を伸ばしたことありませんので、髪の重さとかまとわりつくめんどうくささとか、経験しないと生まれない作品ではないかなと受け止めました。

ホラー映画は別にして、実社会で、長い髪の女性に闇を見たこと僕はなくて、闇って誰でも持ってて、度合いと出方の違いだと考えています。そんな価値観の私でも、なるほどなあと心にスッと入ってくる作品です。

 

眠れないくらい悲しいことなんてそうそうないから味わっておく

これは、じめっとせず、悲しみを徹底的に見てやろう(味わってやろう)という姿勢がカッコイイ作品だと感じました。泣けたら楽になるのにと思う程度には、悲しいことはありましたけど、逃げずに味わうこと大事だなと感じています。

この作品に、強く共感します。

 

この部屋で遊んでくれてありがとう排水口に流したピアス

 別れの歌ですよね。ただの引っ越しでも、引っ越し屋さんが家財道具を運び出した後の、掃除されてピカピカになった部屋は、もう自分が住んでいた気配が失われていますね。私はそんな、がらんとした生活感のなくなった部屋のドアを閉める前に、まるで儀式のように、ピアスを流す様子をイメージしました。

切ないとか悲しいとか、一言で言えない、多くのことが感じられて、好きです。

 

遠くから見える花火は観覧車みたいやねって笑いかけたい

自分の知らない土地の言葉に弱いってありませんか。

例えば、好きだな仲良くなりたいなと思う人がいて、一緒に花火を見に行くとします。屋台とかも見ました。好意を抱いている人の浴衣も褒めました。もしかしたらアルコールも少し入ってるかもしれません。花火が上がる、歓声が聞こえる、そんな中で、そっと耳元で「観覧車みたいやね」と囁いて、笑いかけられたら、好きにならないわけにいかないといいますか……。考えてみると、僕、チョロいな。

冗談はともかく、「みたいだね」ではなく「みたいやね」にしたことで、この作品の魅力がより増したと僕は感じました。

 

長すぎる髪が背中でからまっておきあがれない このままでいい

上述した「すいかずら」の歌と「闇を抱きすぎて」と、どこかで繋がるような気持ちで、この作品を味わいました。物理的に絡まっちゃって痛いしめんどいし、ということではなくて、「このままでいい」と思うような何かがあって、「おきあがれない」ことがどういうことかを表現した比喩として受け止めました。とても興味深いです。

起き上がれないから「起こして」「助けて」「人呼んできて」ではなく、「このままでいい」というのも、捨て鉢というよりは、腹をくくった状態に感じられて、僕は好きです。

 

ちょこちっぷくっきーって言うときの顔好きだったとか早く忘れろ

まず、音も関係性も可愛らしく感じました。

これは、どう解釈するかで、表情が変わる作品ですよね。

自分で自分に対して、「忘れなさい」と言っているなら、壊れた恋のことを考えないようにしようとする時期にいるのでしょう。

自分が相手に対して言った・思ったことに対して「忘れてよ」と言っているのだとしたら、付き合いだした頃の何かを引っ張り出してこないでよって照れくささを僕は連想します。

相手が自分に対してそう言ったことに対しての「忘れろ」なら、なんだろう、例えば間違いなく確かに愛してくれてるんだけどその変顔写真は捨てて欲しい、みたいな気持ちに似てるかなと思いました。

忘れろと言われるほどに、記憶は強化される気もしたりします。いたずらごころと共に。それで、いじりすぎて、怒らせて平謝りしたりするんですよね。

 

みぞおちに猫をいっぴきのせたまま眠る夜明けは少しつめたい

 猫の個性にもよりますが、夏は一緒に寝たがりませんので、もともと肌寒い季節なのでしょう。みぞおちに乗せて苦しくないのと思いますが、これはイメージで比喩かもしれないですよね。でも、体温の高い猫をお腹に乗せているのに、それでもなお「少しつめたい」という、表現が、とても素敵だと感じました。

 

夢で会うなら監督はわたしだし別れのシーンはカットしておく

何回読んでも、この作品を目にすると、思わず微笑んでしまいます。

すごくチャーミングです。恋愛の関係性も、楽しくて今が続けばいいと思うような時期なのかなって思いました。あなたの夢に行くよとか、夢でも会いたいよ、とかではなくて、「監督はわたしだし」と、言ってくれる人、とてもいいなと思います。

振り回されるわけでなく、振り回すのでもなく、「今の役割なら、私が決める」って歌ですよね。祈るとも永遠とも、一言も使わずに、でも全部入ってる。

僕にはそんな風に届きました。

 

結局、3000文字くらい書いていますね。お恥ずかしい。

(書籍一冊に対してだから許して下さい……)

 

返歌

すいかずら今日を覚えておきなさい 淡い匂いのまま咲きなさい

 

この夢は僕のものだが監督はどうして君でメガホン持つの

 

遠くから見える花火で聞こえない聞き返せない機嫌良い君