短歌読みます、うたあつめ。

拝見した短歌への、返歌や感想を書く、公開ファンレターです。

RE 台風のかすめる沖にほどかれた 風は私を砂へ届ける

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台風。気圧湿度寒暖の差、交通網の混乱等、鬱陶しい印象を抱いてしまいます。

でも、視点を変えれば、待ちに待った台風という方もいるわけですよね。

まず、着想の出発点が自由だと思いました。

 

そして風が砂を私に届けるなら、「風つよいよねー」で済むのですが、「風は私を砂へ届ける」だと、まるで主体がさらさらと少しずつ砂になって消えていくような不思議なイメージが浮かびます。主体が風に運ばれるような、あるいは主体の中を風が通っていくような。

 

考えてみればぼんさんという個性は不思議な方で、同じ肉体を持っていますが、彼の高い知性と鋭敏な感受性を考えれば、彼の中を風が吹くことも、あるいは彼の中に風が吹いていることも、あって不思議がないなと思わされるのです。

 

返歌

台風のかすめる沖にほどかれた ちょうちょむすびの行き着いた先

 

台風のかすめる沖にほどかれた 風で乱れた髪を見ている

 

台風が沖にとどまり動かない 気圧の谷のもたらす憂鬱

RE 大小の万葉集の積み木から 私にも合う木を探してる

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この作品は、リアルのぼんさんを知っていると、胸により刺さるものがあります。

彼のblogをご覧頂ければ分かるのですが、彼はバイリンガルです。しかも、それは彼のごく一部であって、彼の強みや専門性は他にあります。

 

何が言いたいかと言うと、「文語」が分からない・理解できないのではなく、理解した上で、自分の体にぴったりくる言葉ではないという彼の悲しみがあります。

遠くが見えるからこそ感じられる孤独とか悲しみってありますよね。

 

僕がこの歌から希望を感じるのは「私にも合う木を探してる」という点です。

つまり、合わないから拒絶するのではなく、それでも探すよという彼の立ち位置に希望を感じました。

 

返歌

大小の万葉集の積み木から 何をとっても金太郎飴

 

代償の万葉集の罪科で 文語縛りの夢を見たのか

 

広大な万葉集の海原に 泥舟だけど漕ぎいでるいざ

RE 暗闇のメガネを探すようにして 私は人と関わっていく

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目が悪いので、メガネを暗闇で探すことは、心細さを伴います。

手探りです。

ぼんさんにとっての暗闇とメガネの関係は分からないけれど、彼は強いハートの持ち主ですから、心細さとは違う何かかもしれないですが、「手探り」なのは共通するかなと思います。

 

かつ、「私は人と関わっていく」という部分に、「それでも」という言葉を私は感じました。僕らはエスパーではないので、他人の心は分からないです。知ってほしくても取り出して見せることも出来ません。でも、だからこそ、という「手探り」を描いた点に、私は希望を読み取りました。

 

返歌

暗闇のメガネを探すようにして 割れた心を立て直してる

 

暗闇のメガネを探すようにして 暗さの中に輝きを見る

 

関わって切り刻まれて諦めた 闇の濃度がことりと上がる

RE 生まれ変わりするのも綺麗なゴミだけで汚いゴミって燃やされるじゃん

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再利用・リサイクルを輪廻転生と重ねたのかなと受け止めました。

ゴミだって、資源と「汚いゴミ」に分類されるよね?

 

というリアルな視点が、清水さんワールドだと感じます。

それは、「輪廻転生できる人はいいよね」「分類するなら燃やされる側かもしれませんけど何か?」みたいな気持ちさえある気がします。

輪廻転生に関しては、その輪から出ることが仏教などでは目的のはずなので、「燃やされる」ことは別の視点で見れば、それって昇華みたいなことなのかなとも思いました。

 

清水さんの作品は、日常会話に含まれてても不思議がない言葉の選び方なので、例えば、友達やパートナーと雑談してるときに、この一言をパッと出したら、どんな文脈が生まれるかなとイメージしました。

いや、出さずに、むしろ出せないからこそ、歌にして昇華されたのかもしれませんね。

 

返歌

生まれ変わりするのも綺麗なゴミだけで汚いゴミはゴミのままでしょ?

 

リサイクルされないゴミの行き場所を皮肉のきいた名前つけたね

 

リサイクルきっとされないこの心 埋められるもの 焼けば燃えるの?

リアル知人で短歌歴の長い、ふじ子さんから、心に残った短歌についてメール頂きました(7)

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お盆休みでほっと一息ついてます。というか、暑さで溶けてます。

久しぶりに友人に会うなど、時間が経つのが惜しい夏休みです。

皆様いかがお過ごしですか。

 

じつは、8/7にふじ子さんからメール頂戴してたのですが、blogを開く時間がとれなくて、やっと今日、更新かけています。遅くなってしまい、誠に申し訳ございません。

 

今回は2首、お知らせ頂きました。以下です。

 

re-tanka-tanka.hateblo.jp

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RE 真夏には赤道からは程遠い この町の陽も真上に昇る

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太陽どころか人工衛星からだってこんな風には見えないでしょうけど。

 

赤道から遠いことと、僕らの真上に太陽が登ることを、疑問に思ったことなかった。幼い頃は、赤道には赤い道があるのかなって思ってた気はします。

星座の絵本を見て、プラネタリウムみたいに空にも絵が無いのが不思議って感じたこともある気がしますし。

 

ちょっと暑すぎません? って太陽に文句言っても、「いや、それ君らの暮らし方の問題で、こっちはいつも通りにやってるよ」って言われそうな気がする。

毎日暑いですよね。

 

返歌

真夏には赤道からは程遠い街で恋するセミの大声

 

真夏には赤道からは程遠い君の街まで糸をたぐるよ

 

真夏には赤道からは程遠い真冬の住処知っていますか

RE 悲しみは水に溶けます飲み込めば君の気持ちがわかるだろうか

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想いとか心、あるいは恋歌。清水さんワールドは、言うに言えない何かをスパッと言葉でつかまえて、そっと見せてくれる気がします。

 

悲しみが水に溶けるという視点が僕にはなくて、飲めば君の気持ちがと続くイメージがいいなあと思いました。

 

君の気持ちが知りたい、分からないから悲しいこともあるけど、主体の場合は「君の悲しみを私も知りたいよ」という立場かなと思うのです。一言も好きと言ってないけれど、こういう関係性は恋ですよね。

 

それは片思いなのか、もうパートナーなのかは分からないけれど。

どちらの歌として読んでもイメージできる点が、重ねて凄いです。

 

返歌

よしなって辛いだけだよ飲むなって 交換ならば見せてもいいよ

 

濃紺の世界に暮らす悲しみは 人の体の海に溶けてる

 

悲しみも苦しみだって痛みでも 共有するの約束でしょう?